警視庁捜査一課特殊捜査係に勤務する有働公子は4年前、警察官だった夫が勤務中に事故で死亡したのち、一人息子の貴之と二人暮しをしている。一方、不祥事を起こして教職を去った後、 水商売をしていた澤松智永は、密輸ブローカーのグレイ・ウォンと出会い、臓器売買の話しを持ち掛けられ、かつての教え子二人と手を組み、幼児誘拐を企てる。その、連続幼児誘拐事件を担当することになった公子は被害者の母親、楢崎香澄の代わりに、犯人からの電話に対応する「被害者対策」の任務につくが、婦人警官としてではなく、一人の母親として事件の当事者となってしまった。彼女は、わが子を取り戻すため、犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに…。そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。ミステリーの到達点。
(あらすじ)
第一章「二人の女」
警視庁生活安全課に勤務する有働公子は、白バイ隊員である夫を事故で亡くし、3才になる息子を女手一つで育てていた。そんな中、公子は、捜査一課に異動となり、誘拐事件で被害者の母親になり代わって犯人と交渉する「被害者対策」の担当を命じられる。時を同じくして公子の管内で幼児の誘拐事件が多発する。
第二章「母の叫び」
商社マン・楢崎彰一、楢崎香澄夫妻の娘・あゆみが誘拐され、公子は被害者対策を担当する。
犯人からの連絡に、公子は香澄を装って対応し、指示通りに身代金を用意するが、受け渡し場所に犯人は現われなかった。その夜、楢崎家に犯人からの電話があり、現場に刑事がいたことが発覚し責められる。翌日、犯人は、再び身代金の受け渡し場所を指定するが、それは、警視庁と神奈川県警の管轄を交互に移動させ、捜査本部は翻弄される。
第三章「母の孤独な戦い」
犯人からの連絡によって公子は、自分の息子(貴之)が誘拐されたことを知らされる。公子が楢崎あゆみの母親に成り代わり交渉に当っていたことなど、捜査本部の動きは全て犯人たちに筒抜けとなっていた。仲間に話せば息子の命はないと悟った公子は、内通者の存在を疑いながら、必死に平静を装う。そんな折、楢崎家に子供の手形の血判状が届く。
第四章「必死の逃亡者」
警察の追跡を振り切った公子は、犯人が指定した身代金の受け渡し場所へ単身で乗り込む。
しかし、そこに息子の姿はなく、犯人たちによって録音された悲痛な息子の叫び声だった。
公子は犯人の指示に従い、身代金の1億円を置いて立ち去るが、篤志と泉水が金を取りに姿を現した瞬間、公子の運転する車が二人を目掛けて突入。銃を突きつけ子供の居場所を詰問するが、そこへ現われた智永によって公子は撃たれ、身代金も奪われてしまう。
第五章「キーワード発見」
公子は、幼児誘拐事件の被害者・古賀に、子供たちの捜査協力を求めるべく訪ねる。ちょうどその時、彼女を追う神奈川県警の刑事・片野坂も古賀宅を訪れ、公子が姿を見せなかったかを尋ねる。しかし、古賀は一切公子のことは語らず、共に子供を捜すことを誓った。二人は、他の被害者宅を訪ねていくうちに、誘拐された子供たちがアクセスしていた「ペインレス・チルドレン」という名のホームページの存在を掴む。
第六章「謎はつながった」
公子は、古賀の会社の一室にかくまわれて警察の目を逃れる。失踪した子供たちの共通点を調べるため、誘拐された福島真美の母・福島千晶を訪ねた古賀は、真美が三ヶ月前に交通事故に遭い、富家という医師に治療を受けていたことを知る。この話を聞いた公子は、誘拐される前に楢崎あゆみも同様に交通事故に遭っていたことを思い出しました。病院に問い合わせた公子は、あゆみの担当医師も富家であったことを掴む。
第七章「愛しはじめた男」
公子は、富家を尾行し、家族連れで賑わう川崎のイベント会場へ。富家は篤志と泉水に合流しました。息子を誘拐した犯人にたどり着いた公子は、彼らの動きを追い、やがて一人の少年を誘拐しようとしていることに気付く。一方、片野坂ら県警も会場に駆けつけ、公子を必死に捜していた。制服警官の一人が、公子に近づき職務質問をしようとしたとき、泉水が警官を射殺してしまい、会場はパニックに…。
第八章「母の反撃、始まる」
捜査員が詰める楢崎家から一人で外出した香澄は、智永と接触。内通者はなんと、被害者の母親だった。智永は「明日、二度目の身代金を要求する」と香澄に告げる。智永は、公子に2人のつながりを知られる前に始末しようと罠をはる。
第九章「最終章へ」
楢崎家に2度目の身代金の要求があり、運搬車には彰一とともに部下の白石が運転手として乗り込むことになった。公子は、密かに協力関係を結んだ白石からの連絡でこの情報を掴む。捜査本部は、前回の失態から警視庁と神奈川県警に共同配備を敷かせ、片野坂と曽根は共に現場の指揮に当たった。そんな折、本部長の相馬は、県警監察室から取り寄せた片野坂の前歴を見て愕然とします。
第十章「海を越える母の愛」
壮絶な銃撃戦の末、篤志と泉水を射殺した公子。傷だらけの体でショットガンと身代金をもち、鯨仏海岸を目指す。彰一は瀕死の重傷を背負っていたが、意識を失う寸前に「有働公子の息子の誘拐を思いついたのは、あの女だ」という言葉を残した。
最終章「忘れられない想い」
智永とグレイ・ウォンを追って公子と片野坂はバンコクにたどり着いた。同じ頃、古賀も息子の消息を求めてこの地を訪れていた。一方、捜査本部は、公子と片野坂がタイに密航したものとみて、国際刑事警察機構を通じて現地の警察に手配する。片野坂は、手がかりを求めて、かつて自分がグレイ・ウォンと知り合ったバーを訪ねると、そこに「国境近くの村で待っている」と書かれた伝言が残されていた。
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