(ねらい・みどころ)
10年目のクリスマス・イブに出会い、その夜結ばれた同じ太学の男と女。
男の方は欲望に任せた一夜の浮気のつもりだったが、その夜が“初めて”だった女は、男が口説き文句のつもりで口にした「10年後にバッタリ再会して、そのまま結婚しちゃうかもな」という言葉を真剣に受けとめ、卒業しためと、別々の人生を歩みながらも絶えず男の右斜め45度に位置して、ある時はうるさがられ、あるときはグチの聞き役にもなる。
そんな女ごころに全然気がつかない男は、世間並みに女遊びをし、医者の娘を射止めて逆タマのゴールインをするが、やがてその結婚に破れて――――
これは.出会いの運命を信じて10年がかりでひとつの恋を成就させたヒロインの姿をコメディータッチで描く超プラトニック純愛ストーリー。
ありあまるお小づかいで高級ブランドを身につけ、温泉行きに海外旅行、結婚するなら三高、四高とやりたい放題、言いたい放題の独身貴族女性も、最後に求めるのは至高至純の愛。本当に好きな人と生涯を共にしたいということに違いない。
“計算”ではなく“本能”で一途な恋にのめり込み、さして悲壮がることもなく10年がかりに好きな男を射止めるヒロインの姿は、とかくせっかちな現代の女たち男たちに最高最新の本格恋愛講座になるだろう。これがこのクリスマスドラマ・スペシャルの狙いである。女優として充実ぶりをみせている中森明菜が、この“10年がかりのヒロイン”麦田美鈴を演じているのがみどころ。
そのほか相手役六肋に佐藤浩市を初め多彩な顔ぶれが出演。
ベヅト・ミドラーの主題曲「男が女を愛する時」がラストシーンの感動を盛り上げる。
(あらすじ)
1 9 9 1年のクリスマス・イブ、横浜の公園内の枝ぶりをいっぱいに広げた電飾クリズマス・ツリーの下に女が一人たたずんでいる。
麦田美鈴(中森明菜)31歳、まわりで同じように誰かを待っている男や女たちはみんな彼女より若い。電気仕掛けの星空からホワホワと降ってくるボタン雪を手にかざし、すぐ溶けてしまう雪を切なく見つめる美鈴。
そうしているうちにも.まわりの男女はそれぞれ相手が現れて次々に消えて行く。
諦めの笑みを浮かべた美鈴はポケットから小型テレコを取り出し、いつものように“きょうの日記”を吹き込む。
「1 9 9 1牟12月24日、午後10時5分。待ち合わせの約束は10年前にした。アイツは覚えているかな・・・・・・今日という日はあと2時間・・・・・」
華やかな電飾ツリーの下で孤独に堪えながらひたすら待つ女――――――。
10年前のクリスマス・イブ。
居酒屋でのクリスマス・コンパを終えた麦田美鈴(中森明菜)と片桐六助(佐
柿浩市)は、たまたま同じ方角の家路についた。学部が違うため二人は初対面だったが、早くも彼女に下心を抱いた六助は「オレたちって10年後のイヴにバッタリ再会して、そのまま結婚しちゃう運命かな」といった。あくまで口説き女句のつもりである。美鈴は一
瞬虚をつかれたように「どこで再会するの?」「そりただ。例えば横浜の巨大なツリーのある辺りとかさ」
すると著鈴は意外にあっさりと「私のアパートに来る?」と応じた。
アカ抜けない六畳一間のアパートで一夜を明かした六助は、彼女が“初めて”だったことに驚いた。
そして「学校で会っても気安く声をかけるなよ」と言った。あくまで一夜の浮気のつもりだった。
しかし美鈴はそうではたかった。
六助が口説き文何のつもりで言った「オレたちって10目後のイヴに再会して結婚する運命かもな」のひとことに本当に運命的なものを感じていたのだ。そしてその日のことを一日も欠かさないテレコの日記に吹き込むのだった。
一年後の就職のシーズン、すでに恐竜博物館への就職を決めていた美鈴は、また決まらないでウロウロしている六助に教材販売会社を紹介してやった。内定のお礼に美鈴をレストランに招待した六助は彼女がいつの間にか自分のことをすっかり調べ上げていることに
驚き、一度きりのことをネタに結婚を迫られるのかと怖れを感じた。
しかし美鈴は「今んとこ」という条件つきながら“大人の関係”でいいという。勇気を得た六助が「そんならこれから部屋をとろう」というと「あとは結婚するまでとつ
ておく」とあっさり体をかわす。
一体この女、何を考えているのだろうと六助はわからなくなった。
三年後、25歳になって相変わらず恐竜博物館に勤めている美鈴の前にひょっこり六助が現れた。小学校六年生の引率教師としてである。大学に復学して教職課程をとり資格を得たという六助の話に美鈴は、この男、いい加減に見えてちゃんと自分の生き方をしていると見直す思いだった。
数日後、六助は向かいのマンションに美鈴が引っ越してきだのにびっくりした。肉ジャガを持ってきた彼女に「通い妻みたいなことするな」といいながらも「今夜泊まってけ」とスケベ心を出すと、美鈴は「イ、ヤ」と妙にハッキリ拒絶して立ち去るのだった。
その後、六助は妙にマセた教え子、神林(菊地彩美)の母親でデザイナーの梓(松本留美)と怪しい仲にたる一方、身分をいつわって参加した葉山のテニスクラブでの上流社会の集団見合いで知り合った医者のお嬢サマ、矢島美和子(中村由真)と結婚して逆タマの輿に乗る。しかしたちまち破れて傷つく。
一方、28歳で恐竜博物館の女性館長になった美鈴は、六助のその痛みを共有しようとプレイボーイのTVディレクター、宿沢哲章(長谷川初範)に失恋するための恋を仕街け当然の如く傷つく。
しかしあくまでも鈍感な六助にはそんな美鈴の切ない気持ちが通じない。
そして1991年冬、運命のクリスマス・イブがやってきた――――。 |